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実況中継・地上戦とは何か①(ウメハラさん格ゲー初心者講座第三回)

格闘ゲーム界の至宝、梅原大悟さんが、初心者へ向けた解説動画を積極的に配信し続けている。ゲームセンターから家庭用オンラインへー。ステージと共に様式も変わりつつある、この業界への新たな道標として、自分の過去からたどる知見を、喉も枯れんばかりのエネルギーで提示する。初心者講座は「投げ編」「対空編」「地上戦編」の3種。その中でも特に奥が深いこの「地上戦編」について、テキストに起こしてみた。元動画https://www.youtube.com/watch?v=xy3zkSvrKU0

目次

「地上戦」の最終目的から押さえよう

はい、格ゲー初心者講座・第三段。地上戦とは何かです。ちょっとまあ大げさな感じもしますけど。はい、とりあえず地上戦って言われてるけど結局何なのって、まぁすごいシンプルに言うとこちらです。結局ねこれです、投げるための手段。前回の対空講座とかでも言ったんですけど、まぁだいたいカプコンの2Dゲームってこれなんですよ。

あのー、一部ねガードクラッシュとか中段とかで崩すっていうゲームもあるけど結局投げるためですよ。ジャンプもなんだかんだもだいたい投げるための手段、もしくは投げられないようにするための手段ですよってことなんだよね

だから地上戦って言うと何かこうすごい小難しく考えちゃうかもしんないけど全てはここに繋がってるって言う風に考えると分かりやすいかもしれない。

ジャンプをこの地上戦と分けた理由っていうのはジャンプってのは1回飛んじゃうともうそっからあんまり制御きかないから基本的にはやっぱ地上戦とちょっと違うんだよね。

だから地上と空中で分けてると言うことですが、結局はまあ一緒です。投げるための手段です。まあもう少し言うと投げるために近づくための手段って言ってもいいかもしんないけどね。

だからね、第一弾で投げ講座をやったのも、結局全部ここに繋がってますよっていう話をしたくってね。ハイこの投げるための手段と言うことですね。具体的に地上戦ってどういう攻防が行われてるかっていうところに今みんな興味があると思うんですけど、その前に自分が過去に結構影響を受けた人達というのがいるので、地上戦に関してね。先にちょっと昔話をやっちゃうんですけど。

ミスが前提の時代の話

はい、こちら「有限会社マシーン研究所」これ知ってる人います?これ知ってたら相当マニアですよ。これ知らないよねあ、そうか漫画に出てきたよね。そう有限会社マシン研究所って漫画にも出てきたんだけど、まぁこれ本当に有限会社だけじゃなくって今で言うとギルドみたいな感じかな。ある同じ志を持つ二人の人間がこの有限会社マシーン研究所の研究員でした。一人は漫画の中では中洲っていう名前になってるんだけども実際は入谷さんって人で、もう一人は漫画の中だと何て名前になったっけ確か「浅江」とかになってる。実際には「深江」って名前。フカエモンとか俺らは呼んでて。本人は「LZT」って名乗ってました。

確かね。

はい、でこの二人がやってたこの有限会社マシーン研究所って実はね、これ攻略本とかも出してて、ま、ちょっと手に入れるのは難しいかもしれないけども。今から20年以上前に書かれた攻略本と思って読むと結構面白いかもしれない。

この人達におれ影響を受けたんだけども、理念っていうのがあって、その理念っていうのは何かというとこちらですね「相手のミスを期待しない」これって当然のように感じるかもしれないけど、これを熱烈にと言うか徹底してやってる人ってこれだけeスポーツとかって騒がれ始めた今でもそんなにいないんだよね。やっぱりみんなどっかでここ相手ミスってくれんじゃねーのとか、あえて見逃してくれんじゃねーのって言う、まあよく「甘え」とかそういう風な言い方もするけど。

特に今のスト5とかっていうのは全部ミスしないでやりきるってのほとんど無理だから実戦的にはこの相手のミスってある程度は考慮に入れて戦うんだけど、この有限会社マシーン研究所の二人っていうのは相手のミスっていうの攻略から徹底的に排除した。

相手は完璧に対処できるっていう前提のもとに攻略をするんだ、ってまぁそういう風にやってた。で、当時そのスト2の時代っていうのは、まぁ今よりもやっぱり全然レベルが低いから、まぁミスするんですわみんなバンバンミスをする。まず対空なんて、完璧に出せる人の方が少なかったし、連続技もミスするし起き上がりに技重ねれば、リバーサルミスるしめくりは食らうし打っても差し替えして(スカ確)こないし、みたいな感じでもうレベルが低いから甘え放題なのね。プレイしている側としてももう相手のミスを期待しているという自覚もない。当時はミスするの前提じゃん、みたいな風潮だった。

まぁ当時勝ってた人っていうのは相手のミスを誘うのが上手いとか相手がミスしやすい連携をガンガン使う人が強いとかって言う風に言われてた。ところがこの二人っていうのはそんなの攻略じゃねえだろうって。相手のミス期待するなんて攻略じゃねえだろって言ってたんだよね。

これね、自分の話でちょっとここ1、2年の感覚の話をすると。この相手のミスっていうのはどっからどこまでが相手のミスかっていうのが実は曖昧なわけですよ。どっからどこまでが相手のミスって難しくない?

常識を更新する男

俺シーズン3の時に実際に体験したことなんだけど、ガイルでソバットを空振りしたらほぼ100%パンクが立ち大パンの差し替えしてきたっていうことがあったのね。かりんを使って立ち大パンで差し替えしてきた。で、シーズン3のソバットって、ガイルってのはシーズン1~3ってソバットがめちゃめちゃ強かった。食らい判定も今より小さいし、発生も早いしリーチも長いから基本的な対処法としては技を置くだったんだよね。ソバットに対しては何かソバットに勝てる技を置いておくっていうのが基本の対策だったんだけど、パンクだけは全部差し替えしてきたわけ。しかもクソリターンデカい立ち大パンで。その時に「あ、ソバットを空ぶるのって甘えなんだな」っていうことを分からされた。実際にじゃあパンク以外がソバットに差し替えしてきたかって言ったら、いないんだよ。誰も別にソバットに差し返してこなかったんだけど、パンクがやってくる以上はこれは相手のミスを期待した行動なんだなっていう風に俺の中で情報が更新されたんだよね。

だからこの相手のミスを期待しないっていうのは、その時一番相手のミスを咎める人が基準になってくる。誰かがやりだしたら、それが基準になっていくのよ。だからパンクが立ち大パンでソバット差し替えした瞬間からこれはもう相手のミスを期待した行動っていう風になっちゃう。たださっきも言ったように当時と言ったらすごくレベルが低かったのに、なんでじゃあこのマシーン研究所っていうのは相手のミスを期待しないで戦おうなんて言い出したのかって言うと、はい、ここで登場です。有名な方ですけどもはい、この人ですね太刀川政男さん。

はい、この人は当時リバーサル出せません、対空出せません、差し返しできませんという時代にまーすごい精度でこれやってたらしいんだよね。俺も実際見た時に当時の俺が見ても、14歳か15歳くらいの時だったけども、「すげえな」「そんなの返すんだ」みたいな。その時既に太刀川さんは現役じゃなかったから、現役の時はさぞかし今よりもすごい精度でやってたんだろうなと。いま俺が見た時にもすごいんだとすれば、本当にすごいことやってたんだなっていうのが容易に想像がついた。

そのフカエモンと入江さんっていうのは太刀川さんのプレーを見た時にこいつはマジですげーと。だからまあその有限会社マシーン製作所のマシーンっていうのは太刀川さんのことなんだよね。機械だと。こいつはもう人間じゃねえよ。ミスをしないし的確に対処するからこいつはもう人間じゃねえってことでそれでマシーン。だからその有限会社マシン製作所の最終的な目標っていうのは「太刀川を倒す」だったわけ。太刀川っていうのはその今その巷で横行してる相手のミスを期待した行動っていうのが一切通らないと。うん、太刀川を倒すためにはもうその甘えた行動っていうのを一切プレイの中から排除しなきゃダメだというところから研究所ができた。

「マシーン」を倒すには

このマシーンの考え方実際に攻略本読ましてもらった時に、うんとね今見ても多分攻略が苦手な子達が見たらこういう風に攻略するんだとかって勉強になる部分があるはず。考え方としても言われてみやそうだなぁみたいな事ってのは多分いまだにあると思う。当時は俺も基本的な考えとしては相手のミスは期待しないみたいな気持ちだったんだけど、明確にそれを言葉には出来なかったから、ちょっと勇気づけられるような感じで。そこからあのその考えをベースにやってくみたいな、それぐらい影響を受けた考え方だった。

そのマシーンの二人めちゃめちゃ強いように思うかもしんないけど実際にはそんな対戦が強いわけじゃないです(笑)ただ理論は当時としてはすごい先いってたと思うね。当時の人たちにはやっぱりそんな理想言ったって自分お前ができないのに理想ばっか語るなよって。やっぱり思われたみたいなんだけど、そらそうだよね。太刀川ができるんだからお前らその相手のミス期待したプレイすんなよ、なんて言ってる2人組ってちょっとやばいやつじゃん(笑)お前ができるんならいいけど太刀川が出来るからっつってそれを理由に否定してしてくんなよみたいな。

なんかそういうちょっと煙たがられてるところあったみたいなんだけど、まあ時代と少しズレてたのかなっていう感じかな。あの頃はまだみんなそんなに高い意識でやってなかったから、そういう理想はこうだろうみたいなのがちょっと受け入れられなかった。ガチでやってる人も少なかったからね。まぁ一応こういう出会いっていうのがベースにありますよってことですね。

えっとじゃあこの太刀川政男屠るにはどうすればいいかという話になった時にですね、「地上戦」っていうのが有効だろうと。上(ジャンプ攻撃)からいったらもう全部狩っちゃうからね。俺一回巣鴨の大会か何かで見たんだけどXのターボ4で、まぁスピードめちゃめちゃ早いんだけど、知り合いのキャミイが大会で前ジャンプしたのね。まあそしたら当然昇竜拳で返される。で、垂直ジャンプしたら波動拳で落とされた。で、フーリガン。ちなみにXのフーリガンめっちゃ早いんだけどフーリガンは逃げジャンプ大キックで返されてる。全部初見ね。全部初見の行動だったんだけど返されてて。マジで上はもうなんかね、完全バリアみたいな。上来たらもう全部オートで撃墜されるみたいなのを見たらマジで上から行けないですね。だから地上戦しかないね。

なぜ地上戦が有効かというところですね。

地上戦とは「歩き」

歩き。前に歩く後ろに歩くのもそうなんですけど、1フレーム単位で行動を変えられる。どういうことかって言うと基本的に格闘ゲームの一気に相手に近づく技っていうのは1回その行動をとると途中で制御きかないわけですよ。例えばジャンプがいい例で、ジャンプしちゃったら後はもう一定の軌道で飛んでいくしかない。フーリガンもそう。裂空脚もそう。まあ最近のスト5とかで言うとなんだろうな。前ステとかそうかなぁ。とにかく全部、多ければ20フレ30フレ短くても10フレぐらい、まぁ15フレぐらい完全にキャラクターが無防備になるから対応が上手い人は、もっと具体的に言うと動体視力に優れてる人、まー当時の太刀川さんもそうだし、パンクとかもそう。

彼らからすると、「え?いいの?」「10フレームも無防備でいいんですか?みたいな話なわけですよ。ところがいくら相手が動体視力に優れてるからつっても1フレームだけ歩いた人間に対して何かできるかって言われたら、無理なわけですよ。なぜかって言うとガードができるから。1フレーム歩いてたら、ヒットボックスなんか分かりやすいよね。1フレーム歩きました、その次のフレームしゃがみガードしました。これに対して正解ってないよね。ないのよ。これに対しての正解って存在しない。格闘ゲームで1フレーム歩いてきた奴に対しての正解って「ない」。

それってどうなるかっていうと、じゃあ1フレーム歩いた相手に対し正解がないんだったら2フレーム歩けるって事だね。1フレーム歩いた時点でも正解がないんだから2フレーム目も歩ける。もっと言うと2フレーム歩いた相手に対しての正解もないんですよ。ダッシュは15フレーム絶対に、まぁどんなに最速でもね15フレーム間、無防備だけど、前に歩くっていう行為は常に次のフレーム何が起きるかわかんないわけ。相手が何してくるかわかんないわけよ(もちろん1フレームを認識するってこと自体も殆ど無理だとは思うんだけど)。つまりずっと選択を迫ってる状態が「歩く」っていう行為。前に歩こうが後に歩こうが常に何が起きるか分からない状態を維持してる。だから見てから対処する人がうまい人に対しての最終手段はこの歩きなんだよね。1フレームに対して反応できる人間なんてもう一生現れないですから。前歩きが咎められることは絶対にないんですよ。cpuですら前歩きをとがめられない。だからこれは究極の攻めの手段って言ってもいいと思う。前に歩くという行為は究極の攻めの手段。いいですか。

なので、さっきの話とつなげると結局そういう対応のお化けに対しては歩くしかねえんだということなんだよね。用語や言い回しは違うかもしんないけど結局そういう甘えた行動が通じない奴には1フレーム単位での変化をつけれる行動で攻めてくしかないよね。これってドラクエとかのボス戦にもちょっと近いなと思う。FFのがいいかな。ボスってさ、即死系の魔法効かない。当然トードとかも効かない。効くのって物理攻撃と普通にダメージが通るファイヤーとかブリザドとかサンダーとかじゃん。

つまりね、言いたいのはラスボスに効かない魔法の熟練度上げてどうすんだっていうことだよね。RPGで例えると同じ魔法ずっと使ってると熟練度って上がってく。即死系とかトードとかも熟練度上がってく。でもラスボスに効かないんだったら熟練度上げてもしょうがなくないって言う。だったら健全にファイヤーとかサンダーとかブリザードの熟練度上げてくってのが王道なんじゃないのっていうのがマシーン研究所の言いたかった事なんじゃないかなと思うし、俺もその考えは近いもの持ってるね。ここまでいいですか。

3すくみ

じゃあ実際にその地上戦っていうのはどういうことが行われているのか、この歩きを使って地上戦ってのを具体的に説明するとですね、はい、こちら。

こんな感じになっております。ちなみにですね。あの俺の中の地上戦の定義だと飛び道具とかダッシュ攻撃とかまぁなんでもいいんですけども全部地上戦に含まれます。ただ、飛び道具ってちょっとこの普通の地上戦と軸が違うんですよ。軸が違うんで今回は飛び道具はなしで解説します。なので飛び道具なし同士の対決だと思ってください。

基本的に今まで俺がやってきた2D格闘格闘ゲームは全部そうだね。これはね、ストリートファイター系に限りません。飛び道具を除いた2D格闘ゲームっていうのは基本これです。全部これで説明ついちゃうと思う。さっきも言ったように最終的には投げますよっていうゴールがある。なぜかと言うと投げじゃないとこれら全部しゃがみガードに対して無効な行動なんで、この中に投げっていうのは入るという前提は一応覚えといてください。

全部投げの布石。投げがゴールとしてあります。いいですか。じゃあまずこの「踏み込み」。要するに前に出る行動だよね。まぁストリートファイター、スト2とかで言うと前歩き。スト5で言うと前歩きはもちろんだけど前ステとかも、まぁ踏み込みに入るのかな。編み込み。前に出る行為ね。踏み込んでくる相手に対しては何ができるのか、対処法としてはだいたいこの二つですね。スカしと置き…言い方はまあ様々だと思うけどまあ俺界隈の用語だとこう。

スカすとかスカしとか、下がりとか言うんですけど要するに相手が歩いてきたのに対して自分がいる位置をさらに後ろに下げちゃうことで、相手の通常技を空ぶらせたりする。置きっていうのは何かって言うと相手が踏み込んでくるということを予測して相手が歩いたところにちょうど自分の通常技が当たるようにしておく。まぁこれは後で実際にゲーム使って解説しますけど、それが置き。で、置きに勝つ行動は何かって言うと相手の置いた技に勝つ置き。じゃんけんでやる感じだよね。相手がこの技を置いて来るって言うんならそれに勝てる置き技を逆に打つ。踏み込むんではなくて相手が踏み込みを読んで置いた技に対してこっちが置く、みたいな。スト5だとこれが主流。置きに対して置くみたいな。

あとは一部の技は、差し返し。一部の技ってのは例えば置きで強いのはラシードのしゃがみ大パンとか。あとはそうだなあ豪鬼の膝。豪鬼の膝はちょっと難しいかな。後はそれこそガイルのソバットとかね。そういう置きは結構隙が大きい。リーチの長い技は隙が大きいことが多いんですよ。そういうのは差し替えしを狙う。

ではスカしへの対抗策はどうするか。下がる相手にはどうすんのって言ったら、これシンプルで、さらに深く踏み込む。通常の踏み込むよりもさらに一歩深くスカしに対してリスクを負わせられますよって言うこと。ここまでOKですか。

地上戦とは何か②に続く

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