ある日、ノビさんがふとつぶやいたスマホゲームと鉄拳の若手人口の差について、たぬかなさんがさらに問題提起をし、プロとアマ交えた「鉄拳、ひいては格ゲーの人口が増えないのは何故か議論」が一躍この業界でホットなテーマとなった
殊勝なプレイヤーはこの問題について、プレイヤー側に原因があるのではないか、プレイヤー側が作り出す文化やコミュニティのあり方に問題があるのでは、と我が身を振り返って襟を正そうとし、
マッチョな論者はそもそもハードルを越えようとしない方が悪いという主張も展開する
しかしながら私の視点ではこの問題の持つ根本的な原因は「メーカーが意図した結果」に依る物と「技術革新に比べて創造力を伸張できない現状」という、かなり大きな枠組みでの問題が背景にあると考えている
従ってプレイヤーにさほど原因は求められないのではないか、と主張したい
メーカーが意図した結果というのは、そのままで、若手、小さな子らを取り込む努力は初めから切り捨てているということだ
メーカーからすると、それをするのは鉄拳である必要はない
これは新聞ほか古くからある商品はみなこのようなニヒリズムで商売をするようにシフトしつつある
すなわち従来の顧客に対するリッチコンテンツとしてより高価格で売っていく戦略で、初めから新規顧客を大量に取り込むスタンスを諦めるというものだ
いま一つは創造力の欠乏で、これは話すとかなり長くなる
鉄拳を新規が入りにくい問題店の大部分は要求される知識が多すぎることにある
なぜそう言い切れるかというと、知識を揃えるのが大変なため、中級者までの実力がほぼ知識差で決まってしまうことがまず背景としてある
するとどういう事が起きるか
それは中級者までの知識を人が簡単には開示しなくなるのだ
この現象はストリートファイターとの対比でよくわかる
ストリートファイターは知識で実力差が付くのはごく序盤だ
厳密に言うとプロレベルでもそれはあるのだが、勝敗をわけるウエイトを大きく閉めるわけではない
すると例えば「リュウ 連携」などと検索するとそれらはテキストベース動画ベースで数多出てくる。知識で決まるという意識がプレイヤー間にさほどは無いからであろう
しかしながら鉄拳業界の知識は、まるで忍者やスタンド使いのそれである
「名前を知られたら死ぬ」「能力を知られたら不利」
初心者〜中級者の間は、特にオンライン時代も相まって「知識で人を不意打ちする」事が鉄拳の勝率に直接影響するという事がマジョリティの意識となってしまっているのだ
なぜそうなるかというと、鉄拳にはあまりにも共通技が少なく固有技ばかりでキャラが形成されているからである
ストリートファイターの場合、自キャラさえ操作できればその他のキャラのことも何となくわかるようになる
いまされた攻撃が大足、ジャンプ大攻撃、中段技、必殺技
ところが鉄拳の場合、ワンツーショートアッパーライトゥーなどわずかに共通する技はあるものの、ブラッディーマスカレードハーケンやサザンクロスプラスワンなどは知らなければ何段続いて何段目が中段、下段、確反あるなどは対処出来るはずもない
ストにもこういう技が無いわけではないが、最悪殆どの場合がしゃがみガードで防げるし無敵技で弾き返せばいい
しかし鉄拳の場合は知らなければ必ず責任を取らされる
と言う事は嫌でも「知識で殺すゲーム」に序盤はなっていくのだ
すると攻略情報を惜しむようになる
リリでメヌエットをガードさせた後のマッターホルンキャノンが非常に相手の行動を誘ってヒットさせやすいのだが、これで5年食った今でも検索してそんなことは出てこない
かくいう私も鉄拳を現役でやっていた時にはこの知識をブログには書かなかった
という事はこれは情報をプレイヤーが出しにくい背景を作ってしまったゲーム性にこそ問題があると思わざるを得ない
ここになるとメーカーの意図というよりは鉄拳の良さを生かしながら知識ゲーにしない方法を創造出来ていないというのが正しいところだろう
これが第一の創造力の欠乏
第一というからには第二もある
それはスマホと比較した場合に出てくる事だが、入力インターフェイスの変化の無さである
格ゲーの遊び方は未だに1989年にストリートファイターが出た当時から変わっていない
ゲームセンターというゲームのマネタイズモデルは、格ゲーではほぼ棄てられているのに、未だにアケコンやパッドなどの余計なデバイスを伴うスタイルに変化がない
ニンテンドースイッチはそこがうまい
時代に合わせた正統な変化を果たしていると言っていい
子どもたちは場所を選ばずスイッチを持ち寄り広場で遊んでいる
あの姿が格ゲーで見られないことが問題なのだ
それはこの業界の創造力が89年から進歩出来なかったことが原因である
以上のことが初心者が増えない問題として挙げられるのだが、これらを解決するには最早ナムコに入って、鉄拳の新たなバトルシステム、新たな入力インターフェイスを企画して提案し開発する以外には道が無いのではなかろうか
あるいはこうした論考をメーカーと共に続けていく努力かもしれない
プロの方にはぜひこうした提案や問題提起を続けていただき、業界に創造力が巻き起こる雰囲気を生み出し続けて欲しいと思う