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あの頃格ゲーは燃えていた~特別篇 梅原史観「流行るゲーム」

https://www.youtube.com/watch?v=4UusqynJb6k&feature=youtu.be

先日のbeasTVで梅原さんが遂に僕が感じていたことを代弁してくれる回がありました。
今回のブログは↑の動画の20:00あたりから

「流行る格ゲーの特徴は何か」→トガっているゲームである

梅原さんの主張は、その回の中ではこれより少しマイルドなものですが、結局突き詰めればこの結論に至ると思っていますので
今回のやーすコラムはこの命題の証明を展開していきたいと思います
梅原さんと僕はほぼ年が同じなので同じ時代に同じゲームをやっていました

その彼がまずスト2~Xの時代を振り返ります
最も多くの人を引き付けたタイトルは果たして何なのか

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ストリートファイター2(1991年)

梅原さんはスト1から振り返っていましたが、実質これが格ゲーの始祖だろうとも言っています
同キャラが使えないという特徴がありました。
なので全国大会の決勝は、ガイルが最強だとわかっていながらジャンケンで勝った方がガイルを使い、その人が優勝するという結果に。

もちろん、このタイトルが出た当時の衝撃は大変なものでスト2筐体は300万円ぐらいするものの、3日で回収し後は純利益ということで雨後の筍のように町にゲーセンが乱立する事態を生んだのです

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ストリートファイター2’(1992年)

梅原さんが言うにはこのゲームが格ゲー史上最も多くの人がやりこみ、盛り上がったタイトルじゃないかということです
四天王が使える、ということは無印の時に色んな場所で偽の裏技情報を聞かされては悔しい思いをしている人が数え切れませんでした

そんなひどいウソが遂に実現する。「ああ、もしサガットが使えたら一生下アイケー打って気持ちよくアパカするのに」
この飢餓感が遂に満たされる時が来たと

また、無印の時の最弱候補で影の薄かったリュウとケンも強化がなされ、ケンなどは大昇竜が画面の半分も飛んでいくなどド派手に変化
ゲーム性としては、やはり鳴り物入りで登場した四天王の作りが甘く、ベガなどはダブルニーで触られたら試合が終わりという極端ぶり

しかしそれでも各キャラに見せ場があり、最も熱く燃えたタイトルだと意義付けています

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ストリートファイター2ターボ(1992年)

全体にダメージを落とし、ダッシュの壊れていた要素を修正した作品
この頃になると飢狼伝説など新タイトルが出てきて、格ゲーシェアの取り合いになり
ダッシュよりも盛り上がりは落ち着いたものの「春麗に飛び道具が使える」などの衝撃から
やはり多くの人がやりこんだと言われています

このタイトルで強かったのは、ブランカ、本田、バイソン
往年のガイルはさすがに弱体化を食らい、ベガやバルログに至ってはいないも同然の弱さにされてしまった

このことが、多くのダッシュプレイヤーが離れてしまう原因になった、と指摘しながら
しかし前述の気功拳やヨガテレポート、空中竜巻旋風脚などの新要素と、ゲームスピードの高速化により
まだ、面白さを見いだせる作品でもあった、と振り返ります

ちなみに梅原さんの歴史はアーケード中心ですが、家庭用では何といってもこのターボが盛り上がりました

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無印もかなりの盛り上がりでしたが、ターボになると「待ちは汚い」とか「逃げるのなし」とか
対戦の文化が生まれるほど。この辺は過去に書いた「あの頃~」でさんざん言い尽くしてますが、
指に豆ができてはつぶれ、硬化し、今でも私の左の親指は爬虫類の背中のような硬さです

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今では考えられないことですが、攻略本も売れに売れ、↑こんな風に各キャラ個別の攻略本まで市場に出る事態に

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一方、世は「カードダス」の人気がやや終焉に向かっている頃でした
SDガンダムで人気を博したカードダスはビックリマン人気の後継とも言える存在でしたが
そういうまったりコレクションするような趣味は格ゲーのアクティブさが奪っていったとも言える
そんな中で、スト2も前代の社会現象とコラボしたものが出ました↑

私も戯れに「ふっ、カードダスか、流行ってた時期が懐かしいな」とシニカルに思いながらも
一枚引いてみたらリュウが出た。裏に攻略情報が書いてあり「足払い波動拳をマスターせよ。足払いの流れから波動拳のコマンドを完成させるのだ」
これは金言でした。今まで出来なかった「キャンセル」がこの一言でできるようになり、今でもこの理論を使って技を出していますし
スト系のタイトルを始める人に「キャンセル」についてこの教え方を用いています

格ゲーってのはそういう画面外での活動が強さを招くことが往々にしてある。
そんなところが面白いんだと思います

話がそれましたので梅原さんの解説に戻ります

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スーパーストリートファイター2(1993年)

なんとなく「スパ2」という略し方が恥ずかしかったスーパースト2
梅原さんも言ってますが、とにかくこの作品には過去2作をもしのぐ衝撃がありました

今までの印象をガラリと変える新キャラ4人
それ以上にグラフィックが何だか違う。ファイヤー波動拳?ファイヤー昇竜拳?
なんだそのセンスは!

ソニックブームも変な色。新しいステージもめちゃくちゃ世界観を変えるようなものばかり

当時、ゲーメストで情報が載った時、友達がそれを切り抜いてファイルにしていて、
教室で少しずつ友達に出し惜しみしながら見せていたんですが

私はあまりのドキドキに体育の時間にみんないない隙にそのファイルパクってやろうかなと一瞬思ったくらい
画像の印象に心をとらわれました

実際に登場してからは自転車で何時間もかかるような都会のゲーセンに友達とトライアスロンかというぐらい進軍しましたね

これほど心を掴まれた「チェンジ」が記憶にあるのは他に「餓狼伝説SP→餓狼伝説3」と「KOF95→KOF96」があります
格ゲーの新タイトルはいつもこんな衝撃を用意していてほしい

梅原さんの話に戻ります
梅原さんはこの作品がスト2シリーズ最高のバランスを持つ作品だという

最強と言われるサガットでも「全く勝ち目がない」という組み合わせはそれほどはない

ひどいバグやハメ、壊れ要素もそれほどはなく、ザンギエフは投げスカりまで登場し、「誰もが納得するタイトルになった」と。

しかし「最も流行らなかった」作品とまで言い切ります。「誰もやってなかった」とまで

理由は「ゲームスピードの鈍化」。それから…

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スーパーストリートファイター2X(1994年)

このタイトルはスーパーから間をおかずに出た印象がありました
そういえば確かに梅原さんが言うように自分はもうこの頃は格ゲーから少し遠ざかっていました
だからゲーメストをチェックしていなかった

ある日、ゲーセンに「久しぶりにスーパースト2でもスッかね」と思って寄ってみたら

「あれ?ディージェイに上昇3発蹴りなんてあったっけ?裏技?」
(ブワン…)「ウーッ!ハッ!」

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ぎえー!これは超必殺技だ!ゲージがある!新作だーッ!!
しかもベガのステージに変なカゲのような奴が表れて?

空中から波動拳2発??なんだこりゃあ!!

当時中学2年生だったやーす。翌日の教室で友達に
「おい、カゲがいるぞカゲが!」

「カゲ」という適当なネーミングは瞬く間に校内に広まり、本当の名前が「豪鬼」という名であることは
同じく親にXの攻略本をその2週間後ぐらいに買ってもらった私の手によって再布教されたのでした

梅原さん曰く、この「X」は今でも対戦が熱い名作ではありますが、バランスで言うと「スーパー」の方がよかったといいます

しかしゲームスピードが任意性になり、結果的に速くなったことにより、客が戻ってきたと語っています

豪鬼という新キャラ、それが使えるという演出もよかった。実際には対戦では自重する雰囲気ができてきたけど
それでもゲーマーがスト2に戻ってくるきっかけになったと

さぁ、果たして格ゲーの調整で大事なもの、「流行るゲーム」とは何なのか

梅原さんはさらに「ヴァンパイア」シリーズも例に挙げました

初代、ヴァンパイアは流行らなかったけど、ハンターは大ヒットした

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理由は、初代の強キャラを据え置きにしたまま、他のキャラをもっと強くした
永久や永パがあるサスカッチ、砲台モードしながら高速で移動できるパイロン、10秒以上固めるビシャモン、球一発食らったら試合が終わるフォボスなど
まさに怪獣大戦争だった。今考えると理不尽なものばかりだが、周りの人はみんなハンターをやっていた

ところが、「セイヴァー」が出て、また人口が減った

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ハンターの壊れたところが修正されて、地味なゲームになってしまった。バランスは良いのだが、と

私にも覚えがあります。KOF97→98の変化でKOFシリーズから一旦、遠のいてしまった
「これさえ出してればいい」みたいな技はなくなり、チマチマ地味にコンボを決めないといけないゲームになったからです

97の時はハリケーンアッパーだけ、真空片手ゴマで削って飛んで来たら雷光拳だけ、飛んできてキックして「どーした」だけ

これがみんなジャンプC、近C、レバー前A、236214Cや屈BA6A214C×3とかばっかりになった
それは逆に個性を感じないし、コンボが前提になってしまった、前提となる知識と技術が増えた、と

もちろんKOF98は格ゲー史上に残る素晴らしい作品です

サード、スト2Xと並んでこれほど長い期間、大会があるタイトルも珍しい

しかしながら間口が狭まったのは確かです

サードで言えば梅原さんはもうひとつこんな例を出していた

「スト3サードにはガード不能のバグが使えない新基盤というものが後に出たが、誰もやらなかった。春麗というバランスブレイカーもいるのに今でもみんなやる。それはなぜか」

強すぎる相手のことなんか、気にしてない

というのです。自分が気持ちよくなれる瞬間があれば。相手が強すぎるなんてことはさほど問題ではない。

自分が気持ちよくなれる瞬間があるか。だから先ほどのハンターも球一発食らったら死ぬけど、こっちも砲台モードで逃げきる、とか
パワーチャージで永パされるけど、その前にハリケーンアッパー地獄で削り殺す、とか、

そんな風にわかりやすい気持ちよさが見えているから、みんなそのタイトルをやるんだということですね
バランスの良さを第一義に据えて地味なゲームにしてしまうと、完全無欠のバランスになっても人はやってこない

「政治でもなんでもない。ゲームであることを忘れてはならない」と梅原さんはいうのです
これに私は付け加えたい。ゲームであるとは何か。それはすなわち「自分でもできそう」ではないか。

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ゲーセンに行って一番ときめいた瞬間というのは「あ、これ強いな!パクろう」でした。
画面端で弱トルネイドフック連発とか、春麗で6中P連発とか、一生それだけしてればいい、という勇気が多くの人にコインを投入させた
この単純なわかりやすさが人に「操作してみたい。自分でも勝てるかも」と思わせるのです

と言ってもSNKvsカプコン、SVCカオスのギースのように限度があるのは事実ですが、kof2003のデュオロンや
98UMのクラウザーのような存在はご愛敬。思えば「北斗の拳」が最初流行ったのも「トキ」の存在が大きかったのではないでしょうか。

格ゲーが新規参入者を見込める要素は「初心者でも簡単に操作できる」ではない。「初心者でも簡単に勝てる」なのです
勝つインスピレーションが短い工程で湧くから新規参入者を取り込める
バランスがいいからe-sportsとして、息の長いタイトルになれる、という作り方は安易ではないか、という警鐘なのです

面白くなくてはゲームは意味がない

面白そうに見えるゲームというのはすなわち「トガっている」ゲームではないか

ならば安易な下方修正は格ゲー人気を衰退させるだけである

これは私の結論ですが、「バランスの偏りに議論が絶えない、それが流行っているゲーム」だと歴史を見て思います。

思わぬ長文になりました。読んでくださった方はありがとうございました!

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