②からの続きです
「eスポーツの定義は何か」の結論から前回のように出たことで休憩をはさみ、いよいよ「今回の座談会のメインディッシュ(ウメハラさん)」に議題が移ります
目次
プロライセンスは必要か
ここで、梅原さんは参加者と視聴者に冒頭アンケートを取ります
その説明は「もともとなかったものだから、その時点で「必要」ではないだろう、この存在に肯定的か否定的かで答えてください」というもの
座談会の登壇者は9割が「肯定的」の意思表示をしますが、視聴者は7割が「否定的」だと答えます
このテーマではeスポーツ協会理事の浜村さんがほぼ登壇者の質問を一手に引き受ける形になり、答えも明確なので、テーマにはほぼ完ぺきに決着がつくことになりました
結論からサクっといいます
そもそもどんな経緯で生まれたのか
浜村理事は「格闘ゲームで賞金大会を開くと、現状は額が一定規模を超えた場合にいくつかの法の規制を受け、景品表示法違反や賭博行為などの可能性になる。しかし「プロ」の認定を受けたものならその限りではない。」という答えを、そうした法律に関わる消費者庁、経済産業省、警察に何度も足を運ぶことにより引き出します。
この法律の要諦は「素人を集めて賞金大会を開くこと」のギャンブル性、射幸心をあおることのダメさを規制するものなので、将棋のように「プロ」それで飯を食うという意思表示と覚悟、それに伴う実力があり、なおかつ認可団体が認めるなら、前述の法律とは無関係になる、ということを官公庁から引き出した上で発行したというのです
いわば日本で大規模な賞金大会を開く上での中間生成物と言っていいでしょう
便宜上の設備なのです
そうなると、プロライセンスが必要かとか肯定的かとかの議論に意味はあるのでしょうか
そんなものを用意しないと賞金大会も開けないという日本の法律の不備具合にこそ意義論を考えてみたくなります
参加者からは「なぜ2年の有効期限と、その更新がeラーニングによって行われるのか。その時点で強い人かどうかではないのか」
そういった意味の質問も出ます
これについては「協会が選手をスポンサーにあっせんしたり、海外に派遣する選手として打診することもある。そうした対象でいて良いかどうかは本人の意思を確認する機会がいる。だから設けた」そのように説明があります
こうした説明に会場はほぼ納得。
ハメコ。氏が「今の説明をもっと最初からわかりやすくしておけば、視聴者の7割がネガティブな意見を示すことにはならなかったのではないか」
出だしで損したのでは、と質問が出ます。
それについては「設立した団体の実績が早く欲しかったので、プロライセンス発効を急いだ」と説明があります。
今年(2018年8月)にはインドネシアのジャカルタでeスポーツのオリンピック大会があるのですが、ここに日本として参加するためには、国内に3つあったeスポーツの団体が一つにまとまる必要がありました
国内に統一的な団体があることが、その種目で「日本」を背負って参加できる条件になっているのです。このため、急ぎ団体は統合し、その活動実績を示して五輪に参加する準備を整える必要があった、というのです
そのため説明が後手後手に回ったということと、あえてメディアに出ないように取材を断っていた、とも浜村さんは説明します
「どうしてあの会社が代表的にしゃべっているのか」と反感を買うことを恐れたそうです
ここからは浜村氏が説明しなかった部分を私の想像で補いますが、団体は法人の有志で設立されているようなところがあり、出来立てホヤホヤなので、まだ広報部門などがしっかり組織されていないのかもしれません
つまり団体の誰が広報を担当するか、が組織されてない状態で個人でしゃべると、せっかく生まれたばかりの組織に承認されないままイニシアチブを取って軋轢が生まれるかもしれない。そんなことを恐れたのではないでしょうか。
いずれにせよ、プロライセンスは賞金大会を開くための設備だったということがわかり、会場はまた納得の空気に包まれます
■浮かない顔
しかし1人だけ浮かない顔をしている男がいました
ウメハラさんです
「皆さんの足を引っ張るつもりはないから、プロライセンス反対はしない。しかし、どうもネクタイつけて働いたことがない俺からすると、今の話はワクワクしない。大人たちが集まってつまんねーこと話してるなと思ってしまう。」
完璧なプロライセンスへの説明と、背景に大きな情熱があったことがわかった直後だけに、会場には一瞬で緊張が走ります
「ずっとゲームには風当たりが強い時代があった。それが賞金大会開いて、eスポーツという名前に代わって、ライセンスを発行して、でもそれだけじゃあ何だか日陰者の復讐で終わっている気がする」
曇る登壇者らの表情
「まだ、メーカー、プレイヤー、スポンサーが一丸とはなってないでしょう。しかしこれらが一丸となった時に、日本ってすげえな、この日本どうなっていくんだろう、という期待感を若い人に与えてほしい。海外に派遣するという発想が既に負けている。海外?いや日本でしょ。海外で開かれるEVOが現状、世界一の大会なのはわかる。でもそれ以上のものが日本で出来るはず。そういうことは理屈じゃなくて思いが大事なんだ。自分らでそれが出来ると信じていればきっとそうしたものは出来る。おれは日本が好きだし、日本、なんかすげえ、と思われたい。そういったものを作っていくようになっていってほしい」
冒頭の浮かない顔は、誰もが思いもよらなかったウメハラの中にある巨大な大和魂の一端だったということがわかり、会場は一気にあふれる感動で満たされるのでした
今年は明治維新150年でもあります。
ウメハラを坂本龍馬として、このメンバーがeスポーツの文明開化を巻き起こしてくれることに期待を大きくする座談会となりました