
前回ウメハラ講演録①の続きです。
才能はひとつ
フリーターをしながら格闘ゲームをやっていたんですけど、
アルバイトをしていた飲食店にはたまたま同い年の人がそろっていたんですね。
8人しかいないバイトのうち4人が自分と同じ22歳だった。
すると、同年代と話をするのはなかなか面白いもんだなってことで、そのバイトは珍しく長く続いたんですよ。
ゲーセンで会う人たちは基本的にみんな年上だったから。
ところがある時、3人がそろって辞めちゃうんです。
就職ですね。
3人とも大学に通っていて、自分で敷いた人生のレールの途中にたまたまバイトをやっていただけのことだったんです。
そこで気づかされてしまった。
なんだそういや、俺だけ違ったな。仲間だと思ってたけど、卒業した3人とは根本的に違う。
さすがに将来のことをこれまで深く考えてこなかった僕も不安になりました。
今から自分に出来ることって何だろう。学もないぞ、資格もないし、人とのコミュニケーションも得意じゃない。
そう色々考えて麻雀の道に進むんですね。
この「麻雀編」は今日はちょっと省きます。色々著書にも書きましたので、興味がある人はそちらを読んでいただいて。
で、最終的に介護の道に進むんです。
なんで介護の道を選んだのか。もうそれまでの僕の人生は格ゲーに麻雀と、勝った負けたの勝負の世界づくしだったんですね。
それで勝負の世界での勝ち方もわかった。こうやれば勝てるんだろって。
でも、それで何もいいことなんかないんですよ。
それでもう勝負ということに疲れてしまっていた。
勝負なんて全然関係ない世界で暮らしたいなと思いました。
親が医療関係だったこともあって介護職を選びました。
その職場は思ってた通り素晴らしかったですね。
何にも勝ってないのに、仕事として成立している。
しかも給料までもらえる。勝たないとモノってもらえないんじゃないの?って。
それぐらい極端な人生を送ってきてたから。
勝たなくても、こうやって人を助けたり親切にするだけで生かしてもらえるんだなってことが
すごい驚きだったし、感動だったんですね。
それで、ようやく勝負がないとダメな、勝負がないと生きてる実感がないような、「勝負中毒」ですよね
そういう人生から解放されて普通に人間になれるのかなーと。将来に希望が持てるようになりました。
そのタイミングで久しぶりに「ストリートファイター4」という格闘ゲームの新作が出ちゃうんですよ。
一瞬思いますよね。ん、出るのか、って。子どもの頃から大好きだった格闘ゲームの新作。
「しかしこれやっちゃうとまた勝負の渦の中に引き込まれる。それだけはもう勘弁だ」って、やらないようにしてたんです。
当時もう27になってました。
格闘ゲームをやめて5年経ってるんですが、辞める直前まで付き合ってたゲーセン友達がしつこくしつこく誘ってきたんです。
たまにはやろうよ、と。
それでしぶしぶ、「ちょっとだけな」って言ってゲーセンに言ってみると、もう、
勝てる勝てる。
もう天才じゃないかってほど勝てて。
この5年は本当にブランクだったんですよ。まったく触らないとまでは言えないけど、ちょこっとやってみるぐらいにしかやってなかった。
しかし実際にやってみると、画面の中で起きる出来事が完全に自分の思う通りになっていく。
こういう風にキャラクターを動かしたいな、こういう風に勝ちたいなと思ったことがそのまんま現実になっていくんですよ。
22の時にアルバイトの仲間が卒業したのを機に格闘ゲームを離れてからはずっと自分の弱点と向き合って生きてきたんですね。
長所と短所で言うと短所しか見ないで生きてたんですよ。だってゲームしかやってこなかった人間がゲームやらなくなったらもう短所しかない。
だからもうどこの職場に行っても「なんでおまえそんなこともできないんだよ」「またおんなじミスしやがって」というようなことばかり言われるし、飲食店で「前株→㈱で」って言われても「まえかぶってなんですか」って言って怒られちゃうとか。そんなレベルですよ。
中学の時、どうして仲間と一緒に勉強しなかったんだろう。
バカなことに時間使ってもったいなかったなって思ってました。
介護の仕事だって、やっぱり出来る人間とどんくさい人間といるわけじゃないですか。
間違いなくどんくさい人間なんですよ。
直接言われなくてもそういう空気感はある。
それはたとえ表面上は出てこなかったとしても悔しいじゃないですか。1人の男として悔しい。
しかしその新作格闘ゲームが出るころにはもう「悔しい」という感覚すら忘れてたころですよ
もう受け入れちゃってる。
俺は若いころ、準備をするべき時間に準備をしなくて大失敗した人間だって。
後はもう一生かけてこの清算をするしかねえって。
ちょっとネガティブですけどね。そう思ってたんです。
ところが、いざゲームセンターに行ってみるとそんな自分がもうスーパーマンのように動く。
それで思ったんです。
「あぁ、もうやってもいいかな」って。(つづく)